三月定例会振り返り

開催日:3/12 開催場所: 参加人数:全体16人(初参加:4人・大人:3人)

久しぶりの振り返りですね。ありぷら自体も二ヶ月ぶりでした。参加人数がだんだん増えてきています。基本10人程度で話し合う事が多いのでうれしいですね。

さて今回は、もし明日から目が見えなく見るとしたら何を見るか、なぜ努力が重んじられるか、などの素敵問いの中から、いつ大人になるのかという問いを選び対話をしました。


[内容]

①まず、自立していると大人である、という意見があがりました。働いて一定の稼ぎをえる(えられる)、つまり、「一人前」である状態こそが大人であるという状態であるという意見です。これに対して、大人でも病気などで自立できない人がいるから必ずしもそうはいえないという人や、見た目だけで大人と判断される時もあるという人が出てきました。そこから、一人前である状態と大人との違いとはどのようなものか、などの問いが上がりました。「大人になる」と一口に言うと、こども(未成熟)から一人前(成熟)の存在になると思いがちですが、「大人になる」という言葉には、年齢を重ねたことで義務を課されるようになったり、見た目から社会的に一人前の存在として認識されるようになったりするという単純な意味があることがわかりました。言いかえると、「大人」という言葉には形容詞的に人物にかかる意味としての大人(ex.大人な人)と、名詞的な役割で後者の単純な意味を持つ「大人」という言葉があるという事です。だらしがない大人と言ったり、一人前の大人と言ったり、大人な人と言ったりしますよね。単純な意味での「大人になる」はもちろん納税の義務が生じるなどして生活を自らの力で紡いでいく必要が生じる年齢に達したときなので、前者の形容詞的に人物を表す「大人」になるというのはどのようなときなのかという問いが出ましたが、そこでこの論点に関する議論は止まってしまいました。

②また、社会から大人扱いされ始める次期が遅くなっているという意見も出ました。昔は元服すると大人として扱われるようになりますが、現代では成人式(20歳)や働き始めから大人として社会に認められるようになります。そこから、社会に求められる能力が高まってきているために「大人になる」時期が遅くなりつつあるのではないかという意見が出ました。過去と現代を比較し、現代において大人として求められている能力から大人という概念に迫っていこうとする論点ですが、あまり掘り下げられませんでした。ただ、親に限って言えば、先生と生徒の関係からもわかるように、何かを与える側であり、子どもはその逆で何かを与えられているということは能力として挙げられました。

③子供と大人での感覚の違いも挙げられました。大人は自分達の未来における可能性が狭まっている(ex.プロ野球選手になる)と感じ、子どもの時は金銭面から自ら決定し行動していく事ができると感じているという違いです。直接問いを深めるには至りませんでしたが、大人と子どもどちらになりたいかという質問から大人と子どもの違いについてや、大学生という存在の曖昧さについて議論しました。また、このとき否応なくなるものだからどちらとも決めかねるという意見もでました。

④その他のあまり掘り下げられなかった切り口としては、子供から大人になるときに視野が広がる、諦めることを知ったらそれが大人かも?、子供の間に知らされないことを知るようになると大人になる?、場面によって大人の自分と子供の自分を使い分けている、などがありました。


[感想]

今回は、上手く一つの議論だけを深めていくことができなかったという感覚がありました。

論点を後で分けると対話の構造が見えてくることもありますが、対話をしていた時点では他の論点で話していたことをその議論が熟す前に元の議論に流用して考えていた、というケースが多かったように感じます。絡み合って複雑でないことが複雑に思えてきてしまいます。個人として把握できる内容は論点が分散するほど少なくなっていくという事を実感しました。これは哲学対話のデメリットでもありますが、ある種の柔軟性があるという点でメリットでもあると思うので今後も考察が必要な課題となっていくと思います。わざとらしくファシリテーター(司会的役割を担う人)を置くのは嫌いなので、無意識的に一つの論点にみんなの関心を集めて対話できたらさらに深まるような気もしました。

受験で抜けるため、三月定例会をもって高二運営メンバーの運営としての参加は最後となりました。ここのところ全体の議論としてあまり掘り下げることができていなかったのですが、最後の最後で「普通」のクオリティーの議論ができたと感じました。やはり睡眠時間の管理って大切ですね。運営としても参加者としても最後の最後に良い対話ができて満足しています。ありがとうございました。

文責:開智中学・高等学校5年 倉田 英


ありとぷら

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